獨協大学同窓会 埼玉県支部
獨協大学同窓会 埼玉県支部

ブログリスト

『岩崎充益の教育談義』  第1回~ 2022/04/27


★第5回 よしのり先生のこと

 全盲で中学校の教員をやっていた先生が退職した。新井淑則先生である。新井先生は30代の時網膜剥離で両目を失明する。一時は死にたいほどの思いを抱えるが、教育への情熱と自分自身の可能性を信じ再度教職に復帰した。

 よしのり先生は全国の中学校でただ一人、盲導犬を連れた教師です。一日の23時間は盲導犬リルと一緒です。退職とともに、リルも盲導犬を退職させてあげたいと考えています。

 元同僚の教員が語ります。よしのり先生が来て1週間、2週間で子どもたちの態度が変わる。障害のある先生が働く姿を見て、生き方を見て、重要なものを学んでいる。

 よしのり先生が最後の授業に選んだ教材は「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」でした。
 最後の授業が終わると卒業生71名のメッセージが入ったICレコーダーが送られました。次のような生徒の言葉が入っていました。

 「よしのり先生がいなかったら不登校になっていたかもしれません」
 「帰り道、進路の話とか聞いてくれたことを覚えていますか?楽しかったです」
 「つらいことがあっても、何でも乗り越えられるんだろうなって思いました」
 「よしのり先生と出会って将来の夢も決まりました」

 よしのり先生は最後に言います。
 「自分なりによくやったと思うし、よく助けられたと思う。普通、教師と生徒って教える側で、上下関係があるじゃないですか。でも、私の場合はそういう関係もありつつ、並列だったりして、お互いを思いやり、助けあうことが出来たと思います」(次回は7月4日ころ)



★第4回 第4回 精神論で教員の魅力を語っても学生の心に響かない

 毎週水曜日、獨協大学の教職相談室に執務している。教員を目指す学生にいろいろなタイプがある。最近、なぜか女子学生の訪問が多い。毎週、決まって訪問する学生もいる。A君としよう。A君は英検1級をもっている。彼が3年の時、英語教授法を教えたが、明日にでも教壇にたってやっていける力がある。教職に関する勉強も積み、将来は高校の教師になると言う。私は必ずどの自治体でも採用されると確信していた。

 ある日、やや暗い表情で相談室にやってきた。教員採用試験を受けるのを止めたいという。理由はただ一つ、教職教養の勉強が間に合わない、論文が書けていないとのこと、私は彼の出身である東京都を受験するよう説得した。都立高校なら、即戦力になると確信していた。

 結局、彼はある外資系の会社に採用されてしまった。内定通知をもって彼は語っていた。英語とフランス語ができる人材ということで即採用になったこと。夏季休暇が1か月ちかくあること。海外駐在すること。給与が教員よりかなり高いことなど・・・・。

 精神論で教員の魅力を語っても今の学生に通じないことを悟った。

 私の体験を踏まえ、教師の魅力を語ってみたい。

1 教えることが好きな人はどこにもいる。私自身、英語の教員をやってきたが、「英語が好きになった」「将来英語を生かした仕事をしたい」という生徒がいて、教えることが好きになっていった。教師は生徒の生き方に影響を与える存在である。

2 教師は人を育てる仕事である。誰でも学校の先生を通じて大人になっていく。最初に接する大人が教師である。

3 振り返ってみれば、人生の岐路で迷ったとき助けてくれた人が教師であった。そのためその恩師に対する恩返しだと思い私は教師を目指した。

4 学級王国という言葉がある。教師は採用された4月1日から40代、50代の先輩教師と肩を並べていく。教師になったその日から、自分の教育観で自分なりの指導法で先輩教師と勝負することになる。そんなだいご味が教師にある。

 社会に出て、もう一度教師をめざしたいと考えている人は是非教師を目指してください。 (次回は6月20日の予定です)



★第3回 あなたは小学校の担任の名前を覚えていますか?

 4月28日に末松文科相は全国の都道府県、政令市の教育長を集めた緊急オンライン会議を実施した。あらゆる手段で教員を確保するよう指示した。教員不足が深刻化している。小学校の教員不足が深刻である。民間企業との獲得競争に勝てない現状を長年放置してきた行政に問題がある。どうすれば特に小学校の教員不足が解決できるのか提案したい。

1 4%の教員特別手当を廃止し給与を一般公務員以上にする。小学校が一番給与を高く設定する。

2 国庫負担金を従来の2分の1に戻し自治体毎の教員給与の差を無くす。

3 小学校も教科担任制にする。そうする事で持ち時間の余裕が出来る。必然的に小学校免許証を授与する大学
  を増やす。

4 さいたま市始め千葉県などあらゆる自治体が実施している小学校英語教師採用システムの様に採用試験に
  一定の技能を有する受験生は面接のみで採用を決める。
  中高の採用試験も特定の技能を持っている人には教職教養問題は課さない。

 あなたは小学校の担任の名前を覚えていますか? (次回は6月6日の予定)



★第2回 「50」の危機

 なにも、50歳の危機という意味ではない。都教育委員会が4月11日時点で集計したところ、都内の公立小で計約50人が不足していることがわかった。非正規教員を探しても50名の枠が埋まらなかったことになる。

 これは危機的な状況である。自治体のなかで、東京都だけは4月になっても欠員は生じることがなかった。非正規教員で埋まっていた。それが今年は、非正規教員に電話をしても、ほかに就職しましたと言って断わられているのである。ある小学校の校長は知り合いを介して「誰か、いませんか」と声をかけているそうである。私の知り合いで小学校の教員をやっている人がいる。彼女から聞いた話では、73歳で小学校の先生をしている人がいる。児童が騒がしくなっても、その先生は一人黒板に向かい独り言のように授業を続けているそうである。

 初等教育を充実させないと日本の教育はほろびる。つまり、小学校の教育が一番大事である。私は大学で教職課程の学生を教えているが、優秀な学生は教職課程を取っていても、教員採用試験を受けない。なぜ、教職を目指さないのであろうか。

 教育は本来ギリシャ語のskhole「余暇」を語源とする。今の教育界にこの言葉は無縁である。「24時間働けますか」というCMが一時流行った。何年か前まで企業は余暇と無縁の世界であった。最近のニュースによると、ある大手企業では週休3日制を実施しているそうである。ある企業では正午までに会社にこられるならどこに住んでもよい、交通費は月に15万円までだすという。一般公務員より給料は低く、土日返上の勤務状況で、保護者からのクレーム対応に追うわれる教員の世界に若者は目を向けない。

 次号でどうすれば教育界への魅力が戻るのか提案したい。(次号予定 5月23日)



★第1回 「共生」とは 

 ウクライナで悲惨な戦争が続いています。一人の狂人により、多くの善良な市民が虐殺されています。

 21世紀の教育を語るとき「共生」という概念を抜きに語れません。「共生」とは本来生物用語で「自己は他によって生かされている」という意味です。これからの時代は他国の人々との共生、一緒に学ぶ仲間との共生、自分の住む地域との共生を生活の目標にしていくことが求められます。

 グローバル教育は地方を見捨てる教育、貧困層を見捨てる教育を遂行してきました。グローバル教育と英語教育を同一視し、グローバル教育は日本語を捨てる教育だと断言する評論家もいます。

 今は亡き早稲田大学の寄本勝美教授と話す機会がありました。教授は「3つの市民論」を展開しています。ごみ処理、リサイクル活動の行政活動を支えるのは「市民」「企業」「行政」の三者によるパートナーシップであり、この三者が共通した「市民」としての感覚を持たなければならないと話していました。

 今回のウクライナ侵攻はロシアの一方的な利益追求のため、一人の狂人により実行されました。これからの時代はグローバリズムという言葉はあまり聞こえなくなるでしょう。自国の利益を優先に考え、自国第一主義になっていくでしょう。地球全体の「共生」を教育の目標として各国が進めていかないと、地球は滅びるでしょう。



【岩崎充益(いわさきみつます)氏プロフィール】

東京教育大学(現筑波大学)在学中に箱根駅伝でアンカーを走る。 中退後世界を放浪し、37カ国に滞在する。 帰国後、獨協大学外国語学部ドイツ語学科に入学し少林寺拳法部で活躍し卒業。最終学歴は、米国コロンビア大学大学院で英語教授法の修士号取得。

教歴は、横浜の私立山手学院中学校・高等学校、東京都立多摩高等学校等で英語を教え、都立秋川高等学校では舎監長(教頭職)、都立青山高等学校で統括校長を経て現在は東京都教育庁指導部高等学校教育指導課特任教授(学校経営指導、英語科教員指導)ならびに獨協大学非常勤講師。

著書に『「公教育」の私事化-日本の教育のゆくえ』(東京図書出版)、『都立秋川高校 玉成寮のサムライたち』(パピルスあい・社会評論社)、『コロナ時代の公教育:AI時代を生き抜くために』(スローウォーター)、『DX時代の21世紀型学校像』(東京図書出版)がある。





 
 
1